今回は、TLO業務の中核をなす発明発掘について述べることと致します。 大学での発明発掘は、私が先生の研究室を訪問し、発明者である先生からヒアリングを行うことが最初のステップとなります。 このヒアリングに際しては、発明を技術的に把握することは勿論、既に学会発表や新聞発表など、新規性を失う事由がないか、又、発明を実施しそうな企業についても十分にチェックします。 既に何度も書きましたが、特許が付与されるにはあくまで新規性を有することが最も基本的な要件ですので、この点のチェックは十分に行わなければなりません。 勿論、特許出願の目的は権利の取得だけではないことは重々承知しておりますが、TLOでは基本的に権利化の可能性の高い発明を扱うことが建前となっています。 既に発表が行われている場合には、特許法第30条の新規性喪失の例外規定、つまり「所定要件下、既に発表等されている発明であっても新規性を喪失していないものとみなす」という規定の適用の可否を考えるわけですが、同規定は特許庁長官が指定する学術団体による発表や、刊行物発表等であることを要し、又、手続が煩雑となるなど、適用要件が厳格に定められており、必ずしも同規定に頼るのは得策ではありません。 やはり、発表等の前に特許出願を済ませておくのが、後々の権利取得上有利と言えます。 次のステップとしては、発明の先行技術調査です。 このコラムで何回か申し上げましたが、先行技術調査は人間の診断で言えば検査に相当するものであり、特許化に際してどの範囲ならば権利を取得できるか、又、同一又は類似する発明が出願されていないかなど、権利取得の可能性を見極める有力な材料を提供してくれるものであり、出来るだけ綿密に調査することが肝要です。 仮に、同じような技術、或いは関連技術が見つかった場合には、発明者である先生方にフィードバックし、研究内容についてコメントを求めることもあり、フィードバックによって先生方が次の研究課題であると考えていたことを、先んじて特許出願したと言うことも生じます。 このように我々の発明発掘活動は、研究内容の修正を先生方にお願いすることも、性質上あり得るわけです。 次のステップは出願用の明細書の作成ですが、その作成に際しては担当する弁理士に発明の内容をきちんと伝えるとともに、先行技術、権利範囲など十分な打ち合わせを重ね、疑問点があれば弁理士に代わって発明者に質問したり、資料を集めるなどの共同作業を行います。 特許流通アドバイザーの仕事は、単に弁理士に依頼すれば終わりということではなく、明細書作成中におきましても、様々なフォローが必要ですし、明細書案のチェックなどもあるわけです。 たかが特許出願、されど特許出願であると言えるでしょう。 |
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