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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第13回
知的財産戦略に変化の兆し
 
『NOASTEC』第25号 平成15年7月22日発行
 最近、一部の企業において、知的財産戦略に変化の兆しがあると言うことが、話題になっております。
具体的には、特許出願を行うよりも秘密主義を徹底し、技術の流出を防止すると言った内容です。つまり、特許出願を行えば、技術内容の開示を余儀なくされますから、特許を取得するよりも、このような秘密主義戦略を採ることによって同業他社に対して重要な技術内容、ノウハウの漏出を防止すると言うことになります。

 この戦略は、確かに、化学系の製造方法、分析方法や、その分野において圧倒的な強みを持つ企業にとっては、有利に働く場合があります。
例えば、製造方法や分析方法と言った技術の場合は、特許出願によって技術内容そのものが明らかになりますし、製造方法、分析方法の場合は、その製法や分析方法にしか特許が及ばないという特許権の効力の面(製法特許ではその製法で製造された生産物にも及ぶ)、並びに侵害時の立証の困難性等の面からも特許出願を行うメリットは少ないことになります。
但し、同時に化学物質そのものが新規である場合は、物質特許と言うのは非常に強力な効力を持ちますので、戦略上、特許の取得は必須になります。
また、スタンフォード大学のバーグが開発した大腸菌を利用した遺伝子組み換え手法のようなパイオニア的な発明で、且つ同時に論文発表を行う発明などは、やはり特許出願が必要です。

 このように、秘密主義戦略と言いましても、対象となる技術の性格、性質によって特許出願戦略との使い分けが必要です。秘密主義戦略の場合は、管理の仕方など、一定の要件を満たせば、不正競争防止法上の営業秘密として法的に保護されますので、その秘密の管理体制なども併せて検討することが必要になります。
 
では、何を基準に、戦略を使い分けるかですが、製品をリバースエンジニアリング等によって分析すれば、製品の内容を競合他社が知悉できる場合には、自社の事業防衛のために特許出願は必須となります。
一方で、ある特定の材料を微量添加して特定の性質が得られるなど、その製品にとって重要なノウハウや、装置に具現化することが難しい分析方法などは、特許を出さずに秘密主義戦略を採るのがよい場合が多いと思われます。
 
従来は、特許出願の日から1年6ヶ月の経過前に(出願の日から1年6ヶ月後に出願公開されるため)、特許出願を放棄することによって、出願内容を秘密にしながら、先願の地位(特許法39条)を確保しておくことができたのですが、近年の法改正では、このような手法は認められなくなっており、この面からも特許出願戦略と、特許出願を行わない秘密主義戦略の使い分けが重要になっております。


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