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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第14回
特許出願するか否か
 
『NOASTEC』第26号 平成15年8月20日発行
 最近、読んだ小説に、無名の学者Aがある一流科学雑誌に自己の論文を投稿したところ、査読委員をしていた有名学者Bによって、論文の掲載を拒否された上、論文に記載していた研究の基本的なアイデアをを盗用され、そのアイデアを発展させた研究によって最終的に世界で最も権威ある賞を、有名学者Bが受賞してしまうといった話がありました。
アイデアを盗用された無名の学者Aは、自暴自棄となって最後には有名学者Bに復習を遂げるといった内容ですが、そのストーリーの展開には、曲がりなりにも大学等の先生方の研究成果である発明を扱う我々にとって、示唆に富む内容があるように思います。

 私が所属する会社は、既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、大学等の先生方の発明を特許出願するとともに、当該発明を企業にライシングし、得られたライセンス料を大学ならびに先生方に還元することを基本的スキームとしております。
従いまして、社内では、持ち込まれた案件について特許出願するか否かと言う判断を日常的に行っているわけです。

 その判断は、その発明に関して特許出願を行わなかった場合には、大げさかもしれませんが、まかり間違えば、前述した小説のように、発明が社会に出る機会を失わせると言うことも場合によっては生じ得ます。
その判断の裏付けとなるのは、マーケット性、特許性、技術的完成度などですが、その判断を行う立場にある我々は、判断するに足る情報力、技術に対する理解力の研鑽が常に求められるわけです。
企業の特許出願に対するスタンスは、積極的に特許を取得することによって自己の事業の囲い込み、同業他社の参入を排除するのが最も大きな目的であることは確かですが、その様な戦略的な特許出願の影には、膨大な防衛的な特許出願が存在することも事実です。
だからといって、特許出願には費用がかかりますので、我々のようなTLOが、何のセレクトもなしに、持ち込まれた全ての案件を特許出願することは到底不可能です。従って、先生方の発明を特許出願するかどうかの判断を行う我々は、発明を特許という目に見える知的財産へ顕在化させる作業に関わっていると言う使命感を忘れずに、公平な視点を持って判断を行うことを肝に銘じる必要があるわけです。

 一方、TLO等から特許出願を行えない場合もあるので、先生方には自ら特許出願用の明細書を作成し、自ら特許を出すという気概を持って欲しいと言うことを常々感じております。
大学等に知的財産本部が出来たとしても、大学側ですべてを特許出願することは、やはり資金的な面で不可能であると考えられますので、日ごろ、論文をお書きになられている先生方であれば、特許出願用の明細書は、少々慣れられることによって作成できることは確かですので、論文の作成に加えて特許出願用の明細書についても、是非積極的に関与されるようにお勧めしたいと思います。

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