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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第16回
TLOにおける技術移転の現状
 
『NOASTEC』第28号 平成15年10月20日発行
 今回は、TLO(技術移転機関)における技術移転の現状、私見について述べたいと思います。

 TLOの主たる機能は、ご存知の方もいると思いますが、大学等の発明の特許化、ライセンシングによる技術移転です。しかし、単なる特許のライセンシングだけでは、技術移転に繋がらないと言うことを常々感じております。
と言いますのも、大学等でなされている研究は基礎的な段階が多く、まさにシーズの域を出ていないことが多いということ、社会のニーズと乖離している研究がまだ多いということが大きな理由かと思います。
製品レベルに近い段階まで高められた成熟した技術であれば特許性の予測もある程度可能ですし、ニーズとの一致さえ見れば、特許自体のライセンスによる技術移転が産業化に向け、大きな役割を果たすことになります。

 しかし、シーズ段階(アーリーステージ)の研究の場合、具体的な製品イメージすらない場合もあり、特許化に際してもデータの不足、実施可能要件(特許法36条4項)を充足しないなど、いくつもの困難を伴います。
たとえ、特許を出願したとしても、その後の追加開発、応用開発が必要であり、特許のライセンスだけで技術移転がすむというものではありません。
このような場合に、特許による基本的シーズのガードが必要なことは言うまでもありませんが、特許出願の際に添付した明細書にあらわれないノウハウ、暗黙知といったものの同時移転が不可欠であり、かかる状況下では、特許ライセンスに加えて、研究者の方による技術指導、研究者と企業との共同研究も併せて必要になると言うことになります。
また、最近では、研究者自らが大学ベンチャーを立ち上げ、ベンチャー企業に応用開発を委ねるという形態の技術移転もあり、それに伴って起業家支援を同時に行うという技術移転も行われています。
このようにシーズ段階での技術移転には、その後の応用特許出願、資金調達など、やるべきことは山積みしており、到底、特許明細書という紙だけで技術移転がすむ性質のものでないことはご理解頂けるかと存じます。
ここで、大切なのは、TLOの存在意義として、単なる介在者だけで終わることだけは今後の産学官連携を進める上で、絶対に避けねばならないことであり、シーズの段階から、応用開発、製品化と一連の流れを十分にウオッチングし、適切な助言を要所で行うことができる技術的スキル、ビジネススキルを身につけることが、我々TLOのコーディネートスタッフに求められる資質であるということを個人的に感じております。

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