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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第17回
人間の治療方法等に関する審査基準の改定
 
『NOASTEC』第29号 平成15年11月20日発行
 今回は、平成158月に改定された「人間を手術、治療又は診断する方法」(以下、「治療方法等」と言う。)に関する審査基準についてご紹介致します。

 従来、「治療方法等」の発明に関しては、国民の健康維持と言う医療の特殊性を考慮し、人道的見地より、特許法29条第1項柱書きの産業上利用の要件を具備しない発明の一類型として、特許付与の対象から除外されていました。

 このうち、「人間から採取したものを同一人に治療のために戻すことを前提として、採取したものを処理する方法」は、発明の構成上、人体を必須の構成要件とし、上記の「治療方法等」に該当するものとして、やはり特許対象から除外されていました。しかしながら、近年、皮膚の培養方法や、細胞の処理方法等の再生医療、遺伝子治療関連技術は、医療現場を離れて行われる事も多く、受託事業的な形態で、様々な技術が創出され、新産業として大きな成長が期待されている分野と言えます。また、現実に人由来の材料を使用した医薬品、医療材料の特許出願も多くなされており、産業政策的見地からも特許付与の対象となるかを明確化する必要が生じ、このため特許庁は以下の事項について改定を行ったわけです。

(1) 人間から採取したものを処理する方法
「人間から採取したものを、採取した者と同一人に治療のために戻すことを前提にして、採取したものを処理する方法(例、血液透析方法)は、上記「治療方法等」に該当し、特許付与の対象とはならないことは従来と同様ですが、「人間から採取したものを原材料として医薬品(例、血液製剤、ワクチン、遺伝子組換製剤)又は医療材料(例えば、人工骨、培養皮膚等)を製造する方法」は、同一人に戻す場合であっても、審査基準上の「治療方法等」に該当しないこととし、特許法29条第1項柱書きの産業上利用の要件を具備することを明確化しました。

(2) 医療機器内部の動作方法
 「医療機器内の動作方法」とは、例えばX線CT装置における画像処理方法が該当しますが、このような発明は、医療機器内の動作方法であって、治療と言える工程が含まれておりませんので、特許法29条第1項柱書きの産業上利用の要件を具備します。一方、撮影中におけるCT装置の制御方法は、人間にX線を照射すると言う医療機器の動作方法に該当しない工程を含みますし、又、ペースメーカーによる電気刺激方法は、治療方法に該当する工程を含んでいるため、特許法29条第1項柱書きの産業上利用の要件を具備せず、特許付与の対象とはなりません。
逆に、ペースメーカーにおけるパルス発生間隔を設定する制御方法は、間接的に治療と言う側面はありますが、目的自体は機械の動作方法に留まるものであり、審査基準上の「治療方法等」には該当せず、特許法29条第1項柱書きの産業上利用の要件を具備します。

 なお、詳しくは特許庁のホームページをご参照下さい。


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