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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第21回
特許制度の目的
 
『発明北海道』平成17年12月27日発行
 一般に特許制度を利用する方々は、広い権利の特許をいかに取得するかいう点に大きな関心をお持ちのことと思います。確かに、特許制度は、発明の独占による利益と言う面が大きくクローズアップされますので、特許取得によるビジネスの拡大を一義的に捉えるのは当然です。

 特許法第1条の法目的には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」と規定され、究極的には産業の発達を意図した産業政策上の見地から設けられたのが特許制度という事になります。
 端的に申し上げますと、特許は、一定期間、当該技術の独占排他的実施が認められるものですから、それによって大きな利益を得ることができ、市場の占有も可能なわけで、それらが発明をなす上での大きな動機付けとなります。その結果、産業の発達を直接実現するということが、特許制度が目的とする第1の観点です。これが、特許法1条の「発明の保護」と言う側面です。

 一方で、特許を取得するには、特許庁に技術内容を詳細に説明した明細書を提出しなければなりません。この明細書は特許権の効力を定める権利書としての意義があるとともに、同時に技術文献としての役割があります。ここで、注目したいのは技術文献としての役割です。特許出願の内容は、出願公開制度により、特許出願の日から1年6ヶ月後に公開され、公開された特許出願の内容は数多くの技術情報を含むものです。つまり、特許制度の第2の観点は、技術情報を広く一般に公開させるための制度設計がなされていると言うことです。技術情報が秘匿されますと、技術の発達の見地からは、様々な弊害が予測されます。例えば、他社が既に開発してしまった技術を一から開発をしてしまい、開発費をいたずらに浪費してしまうなど、様々な弊害が予測されます。
 
 そこで、私が言いたいのは、皆様方に特許情報をもっと活用してほしいということです。現在ではインターネットの普及によって、特許庁のホームページ上の特許電子情報図書館(IPDL)を利用すれば、比較的簡単に特許情報にアクセスすることができます。そして、得られた情報を基に、技術開発の方向性を決定付ける、技術開発の参考にするなど、様々な活用方法が考えられます。元日亜化学の中村氏などは、他人の論文などは一切読まなかったと言った話も伝えられていますが、これは例外中の例外かと思います。やはり、他社の開発動向を把握したり、トレンドを予測する上で、非常に有益な情報が、特許出願の明細書には記載されていますので、これを活用しないのは非常に勿体ない話です。つまり、技術情報として、特許出願の明細書を生かすということが、特許法1条の「発明の利用」と言う側面の一つになります。

 発明協会などでは、特許情報の検索指導など、様々な活動を行っておりますので、指導を受けながら、御自身が開発されようとする技術についての特許検索にチャレンジされてはいかがでしょうか。私の知っている方は、特許明細書を少なくとも3回以上読んで技術開発の際の参考にし、その上で自ら様々な実験を積み重ねるそうです。以前は、特許庁の閲覧室に朝から晩まで詰めっきりになり、特許に関する情報収集を行うと言った作業を余儀なくされましたが、現在は、インターネット上で様々な情報が得られるわけですから、地理的なハンデも関係ないと言えるかと存じます。
 このように、技術を開発する上で、特許情報は有益な情報をもたらしてくれるものですから、是非とも活用されてみてはいかがでしょうか。


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