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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第23回
知的財産人材育成研修を受講して
 
『Patent』vol.61 平成20年10月10日発行
 平成19年から平成20年にかけて、北海道経済産業局、北海道中小企業総合支援センターによって知財支援人材育成事業が行われ、私も関係機関のご好意により受講生として参加することができたので、その概要を報告する。
北海道地区で行われた研修の内容は3回の事前研修、4回の実地研修が柱であり、他地区とほぼ同様と思われるが、事前研修は中小・ベンチャー企業における知財マネジメント総論、知財コンサルのための知的財産権の基礎知識、知財に基づく事業化への戦略(支援事例から)のタイトルで講義が行われた。
講義の中で個人的に印象に残ったのは、優位性のある知財や技術を有していても、売上げのない(或いは少ない)立ち上げ時の中小、ベンチャー企業は、ヒト・モノなど様々な阻害要因によって知材の価値が生きず、時間の空費により資金繰りに行き詰まることが多々あり、知財ありきの経営は難しいという指摘である。北海道地区では、政府などの肝いりで数年前より設立が相次いだ大学発ベンチャーの優劣が明確化してきており、この点は比較的身近な問題として意識した。中小・ベンチャーは大企業との競争を回避して共存し、適正な市場規模で且つ利益率を確保可能な分野で事業を行うべきとの指摘は、当たり前のことではあるが、納得させられた。
 実地研修は、弁理士1名、中小企業診断士2名と講師1名(計4名)がチームを組んで、実際に担当企業を4回訪問するOJT形式で行った。初回は工場見学、実際に機械を動かしての製品作り、在庫管理状況などを見学し、製造現場の雰囲気を体感した。また、各回の企業訪問では、売上げの構成、経営上どのような問題点を認識しているか、知財に対する考え方、管理体制などをヒアリングし、担当企業の内容把握に努めた。取り纏めた報告書において、チーム内の中小企業診断士は、SWOT分析などを行い、製造設備の老朽化、在庫管理が煩雑化している点などを指摘して改善提案を行っていた。
一方、私が知財がらみで具体的にアドバイスしたことは、弁理士からすれば至極当たり前の事であるが、一応述べると以下の点である。担当した企業の場合、知財について決まった担当者もいないことから兼任で構わないので先ず担当者を決めること、又、特許電子図書館を使用した検索実習を行うとともに定期的な調査の必要性を指摘した。さらに、職務発明規程、発明提案書などのひな形、資料等を整備し、知財管理体制の骨格を構築することを提案した。また、担当企業と関係のありそうな他企業の公報(特許、実用新案、意匠、商標)をプリントアウトして提供するとともに、社内における情報の共有、特許情報を開発に生かす体制作りなども提案した。権利取得の済んでいない商標については登録の必要性を指摘し、模倣品対策として商標の製品へのマーキングに工夫すること、又、担当企業の製品は形状に特徴を有していることから意匠制度(全体意匠、部分意匠、関連意匠)の積極的活用を提案した。
 コンサル実習を行ってみての感想であるが、一つの企業について、経営内容や事業環境を把握し、助言・提言を行うことは非常に手間・暇のかかることであり、実際にコンサル業務を仕事として行うのは、事務所に属する一弁理士にとってかなり厳しく、知財コンサル単独のサービスだけで報酬を得るのは正直簡単ではないことを再認識させられた。しかし、弁理士が通常有している知財に関する知識を生かせば、かなりのコンサルができると感じたのも事実である。具体的には特許、商標、実用新案、意匠の産業財産権四法、著作権法、不正競争防止法などの法的理解をさらに深め、これらを駆使して現時点で最良と思われる保護体制の提案が可能であろう。そして、出願の要否決定の場面では営業秘密としてのノウハウ化或いは先使用権の確保、先行技術調査や各種の統計的資料に基づいて開発の方向性、改良等のアドバイスができると思う。
また、弁理士がコンサルを行う場合に身に付けるべきことは個々の弁理士がおかれている状況によって千差万別であると思うが、コンサルの質向上には自身の専門分野以外の技術もある程度かじっておく貪欲さが必要であるし、経営的センス、知財にまつわる幅広い見識を持つこと、様々な機会を利用して異業種との交流を深め、官や学、金融機関などに幅広い人脈を得ることが重要である。特に北海道のような中小・ベンチャー企業が多い地域では、権利化業務に付随して必然的にコンサル的対応が不可欠である。以前、特許出願の代理を行った会社から、助成金の申請書類の作成を依頼されたことがあったが、場合によっては我々が通常行っている対特許庁以外の業務に関与することも必要と思われる。


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