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いわき特許事務所は特許・実用新案、意匠、商標を専門とする事務所です。

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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第24回
実用新案制度雑感
 
平成23年5月
 現在、実用新案制度は、平成5年の法律改正によって、いわゆる無審査登録主義(実用新案法第14条第2項)に移行し、いわゆる進歩性など実体的要件の審査を行うことなく、形式的要件を満たせば登録を認めるようになっていることは、ご存知の方も多いと思います。

 実用新案登録出願の件数は、2010年において、特許出願件数が約34万5千件であるのに対し、8679件と大幅に少なくなっております。

 同制度は無審査登録主義移行後、存続期間を6年から10年への延長、出願後3年以内での特許出願への変更を認めるなどの法改正も行われましたが、実用新案登録出願は、その出願件数の減少傾向に歯止めがかかっておりません。このことは、実用新案法の保護対象が、特許法と同様、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、且つ、物品の形状、構造、組み合わせに係わるものと限定されており(実用新案法第2条)、技術の多様化した現在においてはやや使いづらい点が出てきていること、無審査登録主義故に権利の安定性が担保されていないといった理由に基づくものと思われます。

 では、実用新案制度の役割はもう終わったと考えるべきでしょうか?私見を申しますと、制度の内容に沿った利用方法を採ることにより、利用する意義はあると考えております。
 その理由ですが、以下のものが考えられます。

 第1に、もし審判に付された際に審判官による審理、或いは第三者が登録の無効を主張する場合に、引用してくるであろう文献等の証拠を、十二分な先行技術調査やマーケットリサーチ等を行うことによって予め予測し、その上で、「請求の範囲」並びに「詳細な説明」を吟味して作成し、無効審判、ひいては侵害訴訟での抗弁に耐えうる内容としておくこと。

 このことは、いうは易しで非常に難しいことですが、出願人自身の製品が、かなりのシェアを占めているようなニッチな分野では出願人自身は常に他社の動向などを常時ウォッチングし、把握していると思われ、情報収集能力のある出願人にとっては可能ではないかと思われます。

 つまり、同業他社が数社しかないような寡占状態にある業種などの場合に、自社の知財部又は顧問先特許事務所によって先行技術調査等を綿密に行うことが可能であり、且つ技術動向についても常に監視できているという前提であるならば、無審査登録でも十二分に有効な権利を確保できると考えております。

 勿論、このような状況を作り出すには、出願人や担当する弁理士には、相当の努力(手間、時間、費用ともに)が求められることはいうまでもありませんが。

 しかしながら、このことは新たな製品開発を行う際にも同時に求められることであり、労を惜しむことなく調査等を実践することは重要であると考えております。

一方で、実用新案登録出願には下記のデメリットがあることも忘れてはならないと思います。 

一. 実体的要件については、無審査で登録される結果、最短で半年以内に出願内容が公表されるため、出願した考案を、改良した技術について特許出願等を行う場合は、新規性、若しくは進歩性を否定する公知技術となり得る場合があり得ること。
二. 特許への出願変更が、原出願日より3年以内の範囲でしか認められないこと。
三. 上記とも関連致しますが、登録後は国内優先権主張出願の基礎とすることができなくなること。
四. 存続期間が出願日から10年であり、ライフサイクルの長い製品には対応できないこと。

 以上のように、実用新案制度には利用に際して考慮すべきポイントがありますが、上述のような点を配慮した上で利用することにより、まだまだ利用価値があるのではないでしょうか。創作を保護する際に一つの考え方を示したものであり、私としては特許に限らず、実用新案、意匠、著作物、不競法など現状駆使しうる法律を最大限活用して知財を保護していきたいと思っております。

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