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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第26回
プロバイダ責任制限法について
 
『Patent』vol.62 平成21年8月10日発行
 著作権侵害の動画がアップロードされた場合、プロバイダ責任制限法に基づいて削除依頼等することが可能ですが、再アップロードされるなど、根本的な解決にならないように思います。
 著作権者は、プロバイダ責任制限法第4条に基づいて、発信者情報(氏名又は名称,住所電子メールアドレスIPアドレス送信年月日及び時刻)の開示請求を行うとともに、その情報に基づいて侵害によって現実に損害を受けている場合には、民法709条に基づいて侵害者に対し、損害賠償を請求することが可能です。また、刑事訴追も場合によっては可能となります。
 いずれにしても、先ず侵害者を特定することが必要ですが、上述のようにプロバイダ責任制限法第4条では、特定電気通信役務提供者(開示関係役務提供者~プロバイダ)に対し、加害者を特定するための情報の提供を求めることができる旨、規定されています。これは、インターネット通信では匿名、或いは仮名による情報発信が可能であり、プロバイダであれば加害者情報を保有していると考えられるためです。
 ただ、加害者情報は個人情報であり、同法に基づく開示請求には、①権利侵害が明らかであること(同法4条第1項第1号)、②開示を請求する者の損害賠償請求権(民法709条)の行使に必要がある等の正当な理由があること(同法第1項第2号)の要件が課されています。
 また、表現の自由は民主主義下、最大限尊重すべき権利であるとともに、一旦発信者情報が開示されてしまうと原状の回復が困難になるなどの観点から、同法第4条第2項には開示請求があった場合は、プロバイダは発信者の意見を聴取しなければならないことも規定されています。
 さらに、同法4条4項には、開示関係役務提供者(プロバイダ)が開示請求に応じず、開示に応じなかったことから損害が生じた場合でも、開示請求者に対しプロバイダは原則として損害賠償責任を負わない旨、明記されています。この規定は、上述のようにプライバシー等の点から開示するか否かの判断に一層の慎重さが求められるプロバイダに、損害を負わせるのは酷であるとの趣旨より法定された免責条項といえるものであり、この規定は様々な制約が課せられているといってもよいでしょう。

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