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コラムCOLUMN

「知的財産の活用」 ~弁理士 岩城 全紀

第27回
関連意匠制度についての雑感
 
平成23年8月15日 平成24年5月21日(一部改訂)
一 関連意匠制度の概要
 昭和34年法の下では、類似意匠制度が存在したが、平成11年に同制度に代わって関連意匠制度が導入された。同制度は当初、本意匠と、同日に出願された意匠について登録を認める旨規定されていたが、平成18年に時期的な制限が緩和され、本意匠の意匠公報発行日の前日まで出願が可能になっている(意匠法第10条第1項)。
 旧類似意匠制度下では、出願時期の制限がなかったこと、類似意匠の意匠権は本意匠の意匠権と合体すること(旧意匠法第22条)などに対し、関連意匠制度では本意匠の意匠公報発行の前日までと制限が課されていること、本意匠との付随性が緩和されていること(意匠法第22条第2項)などが、両制度の相違点として挙げられる。 類似意匠の意匠権の効力については、確認説、確認拡張説などが存在したが、類似意匠権は本意匠の意匠権の効力を確認するための権利であり、本意匠の意匠権に対し付随的な権利ということで独自の効力を有していないと云うことが通説であった。
 これに対し、関連意匠の意匠権は独自の効力を持つとされ、このことも出願時期の制限に繋がっている。つまり、関連意匠の出願時期に制限を設けないとすれば、本意匠の設定登録後においても登録意匠の範囲を連鎖的に拡大することを許容することになり、第三者にとって権利範囲の予測が困難になることがあり得るためである。


二 現状の関連意匠制度について
 関連意匠の出願件数は、2009年分において、本意匠との同日出願が3,296件、後日出願が1,186件で、合計4,482件となっており、全意匠登録出願(30,875件のうち、登録28,812件)中14.5パーセントを占めている。 一方、部分意匠の出願件数は、8,684件(28.1パーセント)と、制度の導入以来ほぼ一貫して伸長しているが、関連意匠の出願件数は低落気味であることがここ数年の傾向である。この原因として、部分意匠は一出願で比較的広い権利を確保しやすいとされていることが主因であり、出願時におけるコストパフォーマンスを意識した結果であると考えられる。つまり、現行の関連意匠制度は、ユーザーにとって魅力のある制度とは云いがたい面が顕著となっているのである。


三 今後の関連意匠制度のあり方についての私見
 Ⅰ.出願の単一性の面 クライアントとじかに接する弁理士の立場からは、現行の一意匠一出願(意匠法第6条)の原則下、一出願中に含ませ得る意匠が一つであるために、関連意匠を出願するには、クライアントに報酬、図面代などの追加負担を求めねばならず、結果的に、関連意匠の出願減少に繋がってしまうことが多々ある。勿論、重要な意匠についてはクライアントを説得し、出願することもあるが、弊所のように地方にあって中小企業が主たるクライアントの場合は、中々負担を求めづらいことも事実である。
  一方で関連意匠制度は、独自の効力範囲が認められるなど、魅力的な一面を有しているので、制度を一部手直しすることよってユーザーが回帰し、関連意匠出願の件数増加に繋がると思われる。
 具体的には、現行の一意匠一出願(意匠法第6条)を見直し、出願の単一性を拡大して多意匠一出願を導入するとともに、相互に類似関係にある複数意匠を一出願で纏めて出願しうる制度に変更することを検討すべきと考える。このことは、ヘーグ協定への加盟も含め、国際的調和の観点からも推進されるべきである。
  多意匠一出願の導入に際しては、含め得る意匠の数を幾つにするか、モチーフとしての出願を認めるか否かなど、煮詰めなければならない課題は多々ある。試案ではあるが、分類体系を整備すると同時に、商標登録出願のように分類毎に出願料を納付することとして、審査負担の増加に同時に配慮することも有効と考える。 多意匠一出願が導入されると、一部の意匠に瑕疵のある意匠権の存在が想定されるので、特許法と同様な訂正審判(権利範囲の減縮)を設けることも必要になるであろう。

 Ⅱ.料金体系の面
  関連意匠の意匠権については、現状、登録料について別個の権利として扱われ、個々の権利毎に納付が求められているが、あくまで関連意匠の意匠権は本意匠の存在を前提とした権利である。従って、関連意匠の意匠権については通常の意匠権とは異なる料金体系に改め、登録料の点からも出願し易い改正を望む次第である。なお、本意匠の意匠権が消滅し、関連意匠の意匠権が残った場合は制度がやや複雑になるが、何らかの手当が必要であろう。
  関連意匠に限らず通常の意匠も含まれるが、登録料については特許料や商標登録料がここ数年で大幅に減額されているのに対し、意匠の登録料は改正が行われておらず、ユーザーにとっては印紙代の負担感が大きい。
  参考までに、特許料と比較すると、特許料では請求項が7つの場合、第1年~第3年分が1年当たり3,700円、意匠の登録料は第1年~第3年分は1年当たり8,500円(意匠法第42条)と、約2.3倍の開きがある。意匠出願の場合、審査請求料の負担はないが、逆に出願料を増額し、年金を減額することの方がユーザーにとっては納得感があると個人的に思っている。
  当該原稿を書いたのは平成23年の夏であったが、平成24年4月より、第11年目以降の1年当たりの登録料が、16,900円に減額され、第7年目以降の登録料と同額となった。従来は11年目以降、33,800円だったことから、半額になったわけである。
  一方で、第4年分~第6年分の意匠登録料は、依然として特許料に比較して高額であることは指摘しておきたい。具体的に云えば、第4年~第6年分の1年当たりの特許料が10,600円(前記と同様に請求項が7つの場合で平成16年4月1日以降に審査請求をした出願)であるのに対し、意匠登録料は16,900円である。

  Ⅲ.出願手続の面
 大正10年法下で存在した「意匠登録請求の範囲」を新たな出願書類、或いは記載事項として復活させることも同時に考慮すべきである。本来であれば、関連意匠として複数の出願が必要な場合に、米国のように権利化を欲する意匠の特徴についてクレームし、複数の意匠(複数物品、非類似物品を含む)を実施例として一出願に含める形態が考えられる。但し、後日出願にならざるを得ない意匠の存在も予測されるので、国内優先権主張出願、若しくは関連意匠制度を存置するなど、補充的な出願を認める制度の採用も同時に検討すべきと思う。
 「意匠登録請求の範囲」の復活は、部分意匠制度との関係、一意匠の概念変更を伴うため、大幅な法改正、特許庁自体の対応が必要になるが、現状の意匠登録出願件数の長期低落傾向からすれば、抜本的な法改正が考慮されてしかるべきと考える。

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