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コラムCOLUMN

「弁理士試験奮闘記」 岩城 全紀

第3回
 ~弁理士への憧れ そして勉強第三期~ 
  令和元年6月7日
この当時の勉強法として強調したいのは、定職を持つことによって生じる勉強時間の低下を補い、通勤時間の有効活用を図るべく、特許法や商標法の条文や論文のレジュメなどを一部カード化して、電車乗車中など何時でも何処でも見られるようにしたことである。これは、A・W先生オススメの方法であった。そして、A・W先生には単にレジュメなどを見るだけでは、不確実な記憶にしかならないということも教わった。自分の頭に確実に記憶され、緊張感で一杯の試験の際に、使える知識とするには生半可な暗記ではダメで、頭の中から、必要事項をリアルタイムに引き出すことができるようになっていなくてはならない。A・W先生は、このような、アウトプットを考えながら勉強し、頭を使い、頭から引き出す作業を行って、「あーそうだったか」ということを実感することこそが必要と語られ、このことは、時間のかかる大変な作業ではあったが、そのお陰で主要な条文や定義はスラスラといえるようになった。目で見ているだけでは単に目で反射して終わっているだけ、という、A・W先生の言葉が今でも印象に残っている。


平成4年以降は、最終合格を果たした平成6年まで、連続して1次試験は突破した。平成4年後半から5年辺りには必須科目に関しては、ようやく基礎力が充実し、Wセミナーの答練会で優秀答案となるなど、ある程度、自信のある問題ならば合格レベルの答案が書けるようになりつつあることを意識した。しかし、私の場合、まだまだ穴の多い勉強をしていたこと、又、選択科目の選定・勉強に手間取った結果、最終合格まで、受験回数6回と、それなりに長い年月を要してしまったのは反省点といえよう。 選択科目は当初は一応、工学系出身ということもあり、理系の選択科目をと思っていたが、自分には向いていないと判断し、平成4年の夏過ぎに、憲法、行政法、商品学の3科目に変更した。この変更は結果的には正解となったが、基本的な法律科目に対して門外漢の私にとって、必須科目と並行しての勉強は本当にきつかった。

話は脱線するが、憲法、行政法を学んだことは、今の自分にとって大いにプラスになっている。特に、特許庁という行政庁に手続を行うことが、弁理士の主たる仕事である以上、行政法を学んだことは本当に役立っている。行政官は、法令にのっとった判断・実務を行う必要があるが、ときには立法趣旨を大局的に考えて行動することも実務上必要と思うこともある。これは、行政裁量という行政法上の論点でもある。 昨今、論じられている憲法は、国民と国との約束であり、ヨーロッパ諸国での革命などを通じて民衆が獲得した規範であることなど、私にとって受験勉強を通じて非常に新鮮に感じられた。日本国憲法は条文の少ない理念法との色彩が強いが、判例などを通じ、長い年月をかけて独自の解釈が育まれた国是といえ、昨今の憲法改正問題について政府は慎重にも慎重を期して国民の意見を尊重し、又我々国民も無関心であってはならず、選挙などを通じて自己の意見を表明することが必要だと思う。


話は戻るが、平成4年は一次試験に合格するも全体のバランスが悪く、二次試験で不合格となった。その頃、私は事務所勤務の身であったが、仕事との両立に苦しみ、勉強時間を十分に確保できないという気持的な焦りから、翌平成5年の3月頃、事務所を退職してしまった。このときは、必須科目、選択科目全般的に合格レベルには達していなかった。このため、平成5年の試験も二次試験で不合格となっている。当然の結果であった。

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