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コラムCOLUMN

「我が職業人生奮闘記」 岩城 全紀

第37回
 ~明細書アルバイト時代
 【前編】「弁理士以前」第四章
 平成2年、自分としては弁理士試験の勉強に打ち込みたいということで、一旦、池袋の特許事務所を退所し、アルバイトで明細書作成の補助業務を行うようになった。当時はフイルムカメラの全盛期で、私自身偶々所属した事務所がカメラメーカの特許出願を扱っていた。担当した技術としては、特に一眼レフカメラが多かったが、当時その分野ではオートフォーカスの高速化及び高精度化(レンズ内駆動モータ又はボディ測距)、フイルム自動巻き上げの更なる高速化などフイルムカメラの自動化を競っていた時代であった。具体例を挙げると、撮影時の自動露出制御(AE)は、いわゆる画面上を多分割して測光する、マルチパターン評価測光の時代に既に入っていたが、この技術においては測光点が数点程度、多くても20点に満たない程度という時代であった。また、その測光点をオートフォーカスの制御にも利用したりといったものがあった。デジタルカメラの特許出願は、ボチボチと出始めていたといった時代である。

  明細書を作成していると、これから発売されるカメラのスペックが想像できるとともに、自分も早く弁理士となって、先端的な仕事に主体的に携わりたいと痛感したものである。 話は、横道に逸れるが、現在のデジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラが、測光点及び測距点が数十点となり、且つ撮像素子の画素数が優に5千万を超えている事などと比較すると、当時のカメラの技術程度は比べるべくもないが、デジタル化された今日でもフイルム時代の基礎的な技術は活かされている。しかし、当時は、その頃の半導体の性能、光変換素子の性能に、カメラ自体の性能・機能が制約されていた。現代のように半導体の微細化・集積化が進んだことに伴い、デジタルカメラの撮像素子の高画素化、又、撮像ソフトの高度化をもたらし、その画像は、もはや大判フイルムの画質を凌駕するに至っているのは皆様ご承知の通りである。技術の進歩は容赦ないと痛感する。 このように、半導体の性能が、製品の性能に直結することは、カメラの分野に限られないことであり、ここ25年間ほどの半導体製造に完全に遅れをとった日本では、一例を挙げると液晶テレビ、有機ELテレビのパネル、CPUなどの製造の多くを外国に依存する状況をもたらし、一部のマスクメーカやウエハ、製造装置などのニッチな分野を除き、一時は世界を圧倒的にリードしていた国内半導体産業が衰退しているのは甚だ残念である。それに伴って、日本全体の技術力低下をもたらしているのは必然的な流れである。日本が繁栄を謳歌していた90年代前後には貿易摩擦が顕在化しており、国際政治的に世界情勢が日本の一人勝ちを許さなかったことにも一因があろうか。

 最近になって外資系半導体産業の進出の動きが日本各地で見られているが、北海道では、政府の肝いりで線幅2ナノの微細構造で、且つロジック半導体の製造を目指し、「ラピダス」という会社が、2022年に設立されるに至っている。また、熊本県に台湾のTSMC社が誘致されたことも記憶に新しい。国産半導体の復活に大いに期待したいが、半導体産業の黎明期には、シリコン単結晶の製造、ウエハからのチップの切断装置、半導体の回路を描くステッパなど、競合する外国企業が少なかったことも日本にとって幸いしていた。今現在、半導体の各分野で多くの競争相手が存在し、それらの競争相手に打ち勝つには多くの困難が予測されるが、何とかして成功してもらいたいものである。
                           第38回に続く

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