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いわき特許事務所は特許・実用新案、意匠、商標を専門とする事務所です。

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コラムCOLUMN

「我が職業人生奮闘記」 岩城 全紀

第5回
~新宿の特許事務所勤務時代
 【前編】「弁理士以前」第五章
・弁理士試験受験3年目の一次試験(多肢選択試験敗退) 
 平成3年の弁理士試験は、前年の一次試験の合格経験が油断を招き、一次で不合格となり結果的に二次試験を受けることができなかった。この頃はアルバイトをしているとは言え、この一次試験不合格という事実は、浪人生の自分にとっては一大ショックであり、当時、受験勉強も止めてしまおう、といった放心状態に陥った。

 この放心状態は一次試験の行われた5月下旬から数か月間続き、故郷の北海道に帰省中の秋ごろ、ようやく次の方針を決めた。即ち、浪人という不安定な身分ではなく、定職を持つことで生活を立て直そうと考え、心機一転を図って受験勉強を継続するために、新宿区のZ・K先生(後、弁理士会会長などを歴任)が所長を勤めておられた特許事務所を新たな勤務先として再就職した。
 このときは本当に勉強を止めそうになったが、何とか続けられた原動力は、前述の池袋の特許事務所での勤務経験から、自分には特許の仕事が合っているとの確信(過信又は盲信?)めいたものがあったからである。当時の私は仕事で、やり甲斐・生甲斐を感じたのは特許事務所での仕事が一番であった。だから是が非でも弁理士になって、特許の仕事を続けて行きたいと考えたことが、受験勉強継続の力になったのである。仕事は勿論、石にかじりついてでも受験勉強を完逐して弁理士になろうという気持が強かったことを、自身として再確認した一時期である。

・新宿にて明細書作成に再び奮闘す
 Z・K先生の事務所での勤務時は建築関連分野の明細書作成補助を担当し、バブル経済の波もあり、月7,8件程度の明細書作成を行っていた。特許出願も産めよ増やせよの時代で、会社の技術者には一種の発明ノルマが課されていた。特許事務所の一所員であった自分にとって、多くの特許出願用の明細書を手掛け、ある程度のスピード感をもって処理するということは、作成スキルのトレーニングになったと思う。今は出願を行うか否かのセレクトが厳格となり、防衛出願的な案件が少なくなっているとも考えられるので、私が事務所に入所したバブル期前後は恵まれていたといえる。当時、私は特許出願用の明細書作成に関し主に弁理士のT・A先生から指導を受け、同時に受験勉強についても大いに気合を入れて頂いた。T・A先生の指導は厳しかったが、その厳しい指導を折に触れて思い出すことが今でもあり、自身の血肉になっていることを実感する。一種のトラウマともいえるが、この事は良いトラウマといえるだろう。

 昨今の出願件数の低落に伴って日本の技術力が低下しているのは、ある種の相関関係があり、一見不要とも思われる特許出願でも発明ノルマが課されることで技術者に何とか工夫する姿勢、又特許マインドを醸成する効用があったのだろうと、個人的には感じている。勿論、徒に出願件数を追うのではなく、知財戦略を十分に吟味した上でのマネジメントが必要であることは当然であるが。
 余談ではあるが、Z・K先生の特許事務所では、勤務、及び弁理士試験の受験勉強の傍ら、所員旅行として中国返還前の香港に連れて行って頂き、当時の啓徳空港に着陸する際のスリルを味わったり、翌年は京都への旅行、季節ごとに開催される親睦会など、今思えば平和なひと時であった。
 以下の写真は京都JR嵯峨駅での所長先生のZ・K先生とのツーショットである。



・弊所での出願件数
 事務所勤務時代の話から逸れるが、弊所の現状を鑑みると、1か月あたり数件の仕事をこなすというのは、私の場合では独立した今の状況では考えられない。私の住む北海道の特質として、メインのクライアントは、どうしても中小企業とならざるを得ず、キチンと作成された提案書や図面がない場合も大いにある。従って、出願書類の作成には手間暇を要し、クライアントの会社や工場などに一度ならず二度三度と赴いて聞き取りを行ったりして、その打合せ事項を事務所に持ち帰り、先行技術調査も含め様々な質問などのやり取りを重ねつつ、明細書の作成作業を行う必要がある。このため特許出願は精々、ひと月に2件程度、場合によっては0件の時も多々ある。というのは弊所の場合、特許出願がメインの業務であることには間違いないが、その仕事の合間に商標や意匠の出願、出願には至らないちょっとした相談、権利の移転登録、特許料の納付など各種の事務手続が割り込んでくるのである。
 このような事情ゆえ、現在の弁理士一人の弊所の場合、処理できる件数も限られ、事務所勤務のサラリーマン時代のように月数件の特許出願をこなすのは現実的に不可能である。北海道のような基幹となる製造業の少ない地方の特許事務所は、手間のかかる仕事を余儀なくされるといえるが、中小企業にとって1件の特許を取得することは大企業の比ではない重みがあり、特許出願に目を向けた場合、かなりの確率で審査請求を行う案件が多くなるのである。地方に生きる弁理士として現実を受け入れ、クライアントとの人的関係を深めながら、共にやっているということになる 。
                         第6回に続く

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