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いわき特許事務所は特許・実用新案、意匠、商標を専門とする事務所です。

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コラムCOLUMN

「我が職業人生奮闘記」 岩城 全紀

第41回
~特許事務所を独立開業
 【後編】「弁理士となってから」第三章
 しかし、TLO勤務による大学での仕事は、私にとって特許事務所勤務時代とは異なる効用があった。TLO勤務以前の特許事務所時代は、明細書等の作成作業の効率化のため、取り扱う技術分野は事務所内で固定化される傾向があったが、TLOでは様々な技術を取り扱う状況となり、自分の全くの専門分野外であるバイオや情報処理など、今まで知らなかった技術分野やビジネス面に関し学習する必要に迫られ、結果的に自身の視野を拡げる切っ掛けとなった。
 
また、発明者から、いかに話を引き出し、特許性を見出すかというインタビューのスキルを、先生方とのヒアリングを通じて磨くことができた。そして、TLO内での発明評価委員会において、発明内容を評価委員の先生方に説明することは、プレゼンテーションスキルのトレーニングにも繋がったように感じる。弁理士の仕事は、人と話す機会は基本的に少ないのであるが、クライアントとは勿論、特許庁の審査官や審判官と面接審査・面接審理を行って、発明の要点や特許性を主張することも仕事上必須ゆえ、話上手というのも弁理士にとって一つのスキルといえよう。そうはいっても、自分の場合は相変わらずの訥弁で未だに自信はないが、話す内容を事前に突き詰めて予習することで、何とか対処している。

 さらに、最も大きかったのは、北海道内に配置された他の特許流通アドバイザーと知り合って懇意にさせて頂き、その方々から特許事務所の仕事を紹介してもらうことが多くなって、営業的な面に、あまり気を遣うことなくスムーズに事務所を独立させることができたことである。TLO時代は5年という短い期間の中ではあったが、事務所勤務では得ることができない様々な経験を積むことが出来た。特許事務所の勤務だけの経験では、私の場合、社会人として未熟だったのである。特許流通アドバイザーの仕事に就くことができたことは、私にとって、弁理士試験の合格に次ぐ第二の転機と云える。その仕事を紹介して下さった前述の弁理士のS・S先生、私という人間を見込んで採用を推進してくれた北海道経済産業局の担当官の方のご厚意に感謝する次第である。  また、TLO勤務時代には、日本弁理士会の委員会の一つである知的財産支援センターに支援員として所属していた。同センター時代に思い出に残る事は、当時、北海道庁と日本弁理士会とは「知的財産に関する支援協定」を締結し、その協定には弁理士会として、北海道庁を知財面から支援することが謳われていた。私は当該支援センターでの北海道担当支援員であり、その所属時は、地域団体商標制度が商標法に新たに導入された時期と重なった。そこで、北海道庁の担当官の方、東京から来て頂いた商標委員会の弁理士の方とともに、全道各地を商標キャラバン隊と称して、地域団体商標制度の説明会を数回に亘り行脚して行った。また、北海道内にある道立の公設研究機関において、特許調査のやり方などの知財セミナーの運営にも従事した。  

 このように私の独立開業の前後は、弁理士会内の知的財産支援センターの支援員を勤めていた時期と重なったが、このことは独立後の自分にとって仕事以外の普段の活動が、いかに大事かということを自己に知らしめることとなった。即ち、その際に獲得した人脈や知識は、私の苦手な分野に直面したときの苦境を救ってくれるなど、その恩恵は計り知れないものがあったのである。支援センターの支援委員を勤めた後は、知財経営コンサルティング委員会、意匠委員会、商標委員会などに所属し、各法域の知見を深める努力をしている。 委員会に所属して成果を挙げるには、原則として月に一度の上京が必要であったことから、北海道からの出席は、かなりハードではあったが、今はコロナ禍を経てズームでの委員会出席も可能となっており、地方のハンデも少なくなってきているとも思う。
                       第42回に続く

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