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いわき特許事務所は特許・実用新案、意匠、商標を専門とする事務所です。

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コラムCOLUMN

「我が職業人生奮闘記」 岩城 全紀

最終回(第5章)
~謝辞
 
 以上、云いたいことを述べてきたが、私が弁理士となり、特許事務所を開設し得たのは、多くの仲間の支えがあってのことである。特に、受験生時代、個人ゼミを作って下さったA・W先生、並びに、そのゼミでT・O先生やM・S先生が貴重な時間を割いて講師となって指導してくれたことには感謝の一語に尽きる。私は、そのような仲間に恵まれたおかげで弁理士試験の受験勉強が辛いと思ったことは余り多くなく、自惚れと言われるかもしれないが比較的楽しく且つ真剣に打ち込むことが出来、自分には適職だったのかなと改めて理解している。勿論、今だから、そう感じる面もあり相応の我慢があったのは事実である。私は多くの幸運に恵まれて弁理士となり、事務所勤務の他、TLO時代は技術移転の仕事や各種助成制度の審査委員、北海道庁へ知的財産方策を答申する委員なども経験することができた。正当性をもって積極的に行動することは僥倖に繋がるのだと今になって思う。

 結果的に、実務経験を積むことと並行して弁理士試験の受験勉強を行ったことで、多くの知己に恵まれ、前述したように一人事務所という形態ではあるが、人的ネットワークの助力があることで、地方である北海道にて弁理士が自分一人だけの特許事務所を営み、知財の専門家として生きていくことが曲がりなりに出来るようになった。また、外的要因としては平成7年頃から普及したインターネットによる各種の情報取得の容易化も、事務所業務を進める上での追い風となった。

 本稿は、仕事の事を記録しようと思って書き始めた備忘録ではあるが、どうしても受験生時代の自分を思い返してしまう。受験生時代は私にとって、それほど強烈な一時期であり、人間として弁理士として、生きていく上での基礎となっているのである。あのように燃えて勉強し、実務を吸収したことは後先にはなく、そのような点が、ある意味貯金となって事務所を自営している今現在に生かされていると思う。困難な仕事に直面した場合でも簡単にあきらめず、プラス思考で何とかしようという気持で対処できるようになったのは受験勉強を通じて精神力が鍛えられたお陰だと感じる。
 受験勉強当時、勤務先の先輩弁理士であるT・A先生から云われたことであるが、受験勉強に苦労し、人より多く時間を要したとしても、その分は弁理士としての正味期間を延長することに繋がるという、妙な励ましがあった。確かに、そのような部分はあると思う。
 受験期間中は即効的に成果の上がるレジュメ暗記だけではなく、前述のA・W先生のMゼミにおいて、条文を始め青本や特許法概説といった基本書を丁寧に読み込んで受験生仲間で議論したり、難問を答練することを重点的に行った結果、その知識・論理性を実務にも活かすことが出来たと思う。つまり、私の場合、受験勉強の知識を仕事にもフィードバックできたため、相乗的に理解が深まったのである。短期間の合格ではなく勉強に時間を掛けることは、回り道のように思われるかもしれないが特許法等に関し理解度の高さをもたらし、又仕事に対する丁寧さ、丹念さにも繋がって顧客からの信頼を得ることにもなり、このようなことが前述の先輩弁理士のいった本質であると思う。
 本音を言うと、私の場合、他人からの強制且つ限られた時間で仕事を行わなければならなかったサラリーマン時代は、自分にとって苦痛な事も多かった。
 しかし、完全独立した2005年以来、個々の案件に時間を掛けて対処したい自分にとって、他人の意見に左右されない独立という形態が自己に合っていたと思われ、受任した個々の仕事に対して誠実に向き合うことが習慣として身につき、結果的に弁理士の仕事を自分の天職であると考えることが出来るようになった。 つまり、独立したことは私にとって良い方向に作用したと思う。この点、あくまで私には独立自営が向いていたという前提ではあるが。

 私の場合、しっかりとした特許事務所設立計画はなく、成り行きのような形での開業で四苦八苦しながらではあるが、特許権や商標権取得のサポートを行い、又、クライアントに対する侵害警告などの難題に対処し、好結果を生むことで安心感を持って事業を進めてもらえる様に処置できたことなど、比較的幸運に恵まれているとも思う。
 弊所は他社に対し、積極的に権利侵害の警告を行うことは余り多くなく、どちらかというと侵害警告を受けた企業側からの相談が多いのである。相談企業が他企業の権利を侵害していると判断される場合は、その旨を相談企業に伝えて侵害を回避する方向にもっていく。しかし、現実には侵害に該当しないにも関わらず、言いがかりの様な内容での侵害警告も間々ある。そのようなときは、回答書を内容証明で他企業に送付して侵害には該当しない旨を、論理的に且つ分かりやすく根拠を示して主張する。これによって大体は収まるものである。

 私にとって達成感を得ることができたのは、弁理士試験の合格が初めてであった。今後も新たな目標を設定し、年齢的な面も考慮しつつ、出来るだけ長く弁理士の職務を続け、生涯一弁理士を目指したいと考えている。
 しかし、来年の令和7年には小生、弁理士登録30周年(知財の業界に入って丸37年)という節目を迎えることになる。自分としては知財という分野において、長期間にわたり良くやってきたという感慨もある一方で、それだけ年齢を重ねたということも事実である。年齢・経験を重ねることで仕事に関しては若い頃よりも知識的に充実し、一たび取り掛かれば良い仕事をする自信はあるが、還暦を数年過ぎた今、以前よりも出来得る仕事量や意欲が衰えていることは正直に告白させて頂く。 つまり、小生としては趣味の分野、具体的には音楽鑑賞(クラシック音楽他)や自転車、スキーが私という人間を育んでくれた。これらの趣味にも注力しつつ、仕事と高レベルで両立させるというのが今の私の目標である。仕事にせよ、趣味にせよ体が資本であることは言うまでもなく、いつまで出来るかが今後の課題となるが、引き際を誤らずに足るを知るということを肝に銘じ、歩んでいきたいと考えている。  
                             完

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